工事完成前に工事目的物が不可抗力により滅失損傷した場合、請負者はなお工事を完成すべき債務を免れず、また、請負代金額の増額を請求することはできず、ただ工事の完成が遅延しても遅滞の責を負わないだけであります。判例は被上告人(請負者)が上告人(発注者)のために「請負ツタ建築物力竣工前、即チ上告人ノ所有トナラサル前ニ於テ天災ニ罹リ破壊シタル」場合は、「右建物ニ付キ生シタル損害ハ当時ノ所有者タル被上告人ノ負担ニ帰スヘキコトハ危険ノ負担ニ関スル法則上誠ニ明白ナリト云フヘシ」としています(大判明治三五・一二・一〇)。履行不能となる場合は請負者は仕事を完成する債務は消滅しますが、請負代金額を請求することはできません。というのは、請負は仕事の完成を目的とする双務契約であって、特定物に関する物権の設定又は移転を目的とするものではないから(民法第五三四条)、危険負担に関しては民法第五三六条(1)項(当事者双方の責に帰すべからざる事由によって履行不能を生じたときは、債務者は反対給付を受ける権利を有しない)を適用すべきであるとされるからであります。したがって、既に支出した費用について償還を請求する権利を有せず、また前払金を受けている場合は返還しなければならないことになります。
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